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私小説 パスタとハグといい加減⑨

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目が覚めて…自分達が違う都市にいると気が付く。

そして、ここはあまりに広いアパルトマンだった。眠い目を擦りながらキッチンへ。日本では考えられないようなスケールの大きなキッチン。ふと、こんなキッチンだったらどれだけ料理が楽しいだろうかと想像してしまう。

冷蔵庫を開けるとブラッドオレンジジュースが入っていた。

シチリアでは、当たり前のオレンジジュースだけれど私にはちょっとしたときめき。そう、私は普通のオレンジジュースよりも、少し甘味の強くグレープフルーツにも似た風味のあるこのオレンジジュースが大好きなのだ。

グラスに注ぎ、ゴクゴクと一気に飲み干す。

ボローニャのホテルは私が目覚めてしまうと、部屋が狭い分必然的に良太が起きてしまったけれど、今回はベッドルームが全く別なので良太を起こす事もなく、1人広すぎるリビングでのんびり早朝を過ごした。

窓を開けて、色彩がまた全然違うことに驚く。ここは南の色だ…。シチリアの色。

ボローニャとは違って、どの家にも可愛らしいベランダが付いている。日除けもまた可愛い。日本でもちょっとおしゃれな家がこういう日除けをつけているけれど、こちらは完全に日常で使うもの。使い古された感じもまたいいのだ。

それにしても…お腹が空いてきた。

そんな事を思っていたら、良太がゆっくり起きてきた。

「華菜ちゃん、お腹空いたねぇ。確か朝食が用意されてるはずだけど冷蔵庫に何かある?」

見てみると、卵やパン等々が入っている。最低限のものが入っている感じだけれどそれで十分だった。

大きすぎるダイニングテーブル…

オムレツを焼いて、クロワッサンも焼く前の冷凍のものが置いてあったからオーブンを使って焼き立てを食べる事ができて、さらにヨーグルトも置いてあった。

やりすぎない…これ以上食べたいのなら自分で買ってきたら?という感じなのだろう。この気楽さが本当に楽だった。

そして備え付けのエスプレッソマシンで入れたコーヒーを飲みながらのんびりしていると、フロントからの電話が鳴った。

「チェックイン手続きするからパスポートを持ってきて!」という事らしかった。私たちもまだ一度もオーナーに会っていないし、張り切ってフロントに降りた。

そこには、私が想像している通りの陽気なイタリア人ルイージが立っていた。

私は心の中で「THE イタリア人だ!!!」と叫んでいた(笑)

握手とハグで無意味なほどの大歓迎…さらに「昨夜はずっと待っていた」と嘘までつき…そして、日本のアニメを子供と見ているらしく、適当なマジンガーZのアニメソングを歌っていた。

そして…色々な街案内を身振り手振りでしてくれて…さらには人のパスポートの生年月日を見て驚愕し(どうせキッズなんでしょうよ…)

手続きが終わって私たちと別れるときは、もうすでに古い友達のような顔をしていた^^;

「あれ?今、会ったところですよね?」と思ってはいけない。彼の心はいつだってopenなのだ。距離感なんてぶっ飛ばされる。程々の距離感を保ちたいから苦手だなぁと思った方、そういう方は安心してほしい。

私たちはその後、彼を見つけるのに苦労するほど、彼はフロントをほったらかしてどこかをフラフラしているのだから…(笑)

そしていよいよ、私たちは美しすぎて、さらにはボローニャよりさらに暑すぎるパレルモの散策に出かけたのだ。

なんとこれは1933年、ムッソリーニのファシズム時代に建てられたという郵便局

ここの街の色は軽いけれど、それはプラスチックな軽さではなく…色彩がボローニャより白っぽい。街の重厚感は変わらない

けどヤシの木があったり、花々が咲き乱れていたり、やはり南の国なのだと思う。

続く

セレナ

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